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小説「手紙」東野圭吾著

罪はいくら償っても

きっと無くなりはしない。

「手紙」概要

著者:東野圭吾

両親を亡くし貧しいながらも身を寄せ合うように暮らす兄弟。

兄は働き過ぎて体を壊し職を転々としていた。

弟を大学に行かせたくて金持ちの一人暮らしの老婦人の家に泥棒に入る。

しかし、その老婦人に気づかれて殺害してしまう。

その時から弟の直貴の人生が大きく変わってしまう。

登場人物

 

<武島直貴>
高校生
兄と二人で暮らしていたが兄が強盗殺人の罪で服役してしまう。
<武島剛志>
元引っ越し屋
体を壊して2か月前に引っ越し屋を辞める。弟を大学に行かせたいと思っている。
<武島の両親>
父親は居眠り運転で事故死。
その後、母親の加津子が息子2人を育てるが、働き過ぎからか剛志が高校生の時に急死する。
<白石由美子>
バスで出会う女性。
直貴に対して好意を持っている。
<倉田>
直貴と同じ寮にいる男性で10歳年上。
元受刑者で妻子持ち。
<寺尾祐輔>
バンドマン
直貴とは大学で知り合う、直貴の歌のうまさを見込みバンドに誘う。
<中条朝美>
哲学科の学生
合コンで直貴と知り合う。家は田園調布。
<平野>
直貴が務める会社の社長

 

剛志の不幸

母親が亡くなった後、剛志は弟を育てるために、高校を中退して働き始めます。

正社員ではなく引っ越し屋の非正規雇用です。

腰を痛めたため出来なくなり営業に移る事も叶わず・・・。

工事現場や仕出し屋にいくも腰痛に襲われ働けなくなります。

直貴が大学進学をあきらめて隠れてアルバイトをしている事や、会社案内を集めている事を知った剛志。

どうしても弟に大学に行って欲しくてやってしまった犯行でした。

確かに弟思いなのはわかるけど・・・他に方法なかったのかと思わずにはいられません。

直貴の不幸

兄が刑務所に入ることになり、直貴の生活も一変します。

高校でも腫物に触るような周りの態度。

大学はもちろん諦めなければいけません。

就職も雇ってもらえず、お金にも苦労します。

職場でも理不尽な目に遭い、恋人とも別れる羽目に。

バンドに誘われデビューの話が来るも、犯罪者の家族という事で外される。

せっかく就職しても倉庫に飛ばされる。

その後も、様々な理不尽な目に遭います。

直貴の部分だけ見たら当然気の毒なんだけれど、自分が逆の立場なら。

もし被害者遺族だとしたら・・・もし自分の職場に直貴がいたら・・・。

表向きは何事もないようにふるまうと思います。そこは大人だから。

でも自分に子供がいたら、自分の子は遠ざけたいという気持ちは分からなくもないです。

直貴は悪くないと分かってはいても、やはり難しいです。

兄・剛志からの手紙

本書の中には剛志から送られてきた手紙が度々登場します。

その手紙が、同じ房の人たちの何気ない話とか、直貴の近況を聞いてきたりとか、苦しい思いをしている直貴とは正反対の能天気な手紙ばかりです。

実際は兄の剛志も自分の犯してしまった罪を悔いて苦しんでいたのですが・・・。

剛志が弟思いなのはとても伝わるのですが、自分が直貴の立場ならやはり見たくないと思ってしまいます。

そして最後の手紙は泣きました。

好きな場面

残酷ではあるのですが、社長の平野が直貴に現実を突きつける場面です。

直貴はもしかしたら、そんな境遇で頑張っていると励ましてもらえるかもと期待したと思うんです。

しかし現実は違いました。

それと、被害者遺族と直貴が対面するシーン。

被害者遺族の方はとてもいい人で言ってることももっとも。

好きというより、この二つの場面が印象深いです。

「手紙」を読んだ感想

とても重い内容でした。

ただ悲惨というだけではなく、ところどころで優しさも描かれてるんですよね。

直貴に通信制に行く決意をさせた倉田とか、心配してくれる担任とか、バンドに誘ってくれた寺尾とか。

それでも散々理不尽な目に遭ってきた直貴の心を溶かすのは容易ではなく

彼女が彼と親しくしたがっているのは確かだった。それはそれで悪い気のすることではなかったが、彼女の無邪気さは直貴にとって苦痛だった。

『手紙』より

この辺りの直貴の気持ちが辛いです。

兄が人を殺しましたとわざわざ言うのも変だし、かと言って、黙って仲良くなって付き合うなんて事になり、その時になって白状して去られでもしたらなかなか立ち直れないでしょう。

加害者の家族ってこんなつらい目に遭うんだなって思いました。

自分にもいつ起こりうるか分からない。

強盗殺人はさすがにないだろうけど、いつ車で人を撥ねるか分からない、自分自身が加害者、もしくは加害者の家族になる可能性だってあります。

反対に自分が被害者、または被害者遺族になる可能性もある。

それぞれの立場になれば、それぞれの言い分があるのは当然で、ニュースなどを見て、加害者が許せないと思う事は多々ありますが、見方が変わってしまいそう。

正解なんてないから、簡単に判断なんて出来ない。

これだけの重い内容を読みやすく書けるのはさすがと思いました。

「手紙」映画化・ドラマ化

2006年に山田孝之さん主演で映画化。

2018年に亀梨和也さん主演でドラマ化されています。

ドラマの方だけ見ましたが泣きました。

映画の方はいくつかのサブスクで配信されていましたが、ドラマの方は現在どこも配信されてないようです。

山田孝之さん好きなので観たいです。

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