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なぜこうなった「リアルワールド」桐野夏生

2023年1月8日

母親を殺した少年と

それに関わってしまった4人の少女たち

「リアルワールド」概要

著者:桐野夏生

女子高生トシコの隣の家に住む少年(ミミズ)が母親を殺した。

理由は母親の過干渉が原因だった。

ミミズはトシコの携帯を拾って逃走する。

トシコは自首を勧めるが通報はしない。

そこへトシコの友人、テラウチ、ユウザン、キラリンが関わってくる。

少年の逃走劇を幇助したり、果ては同行までしてしまう。

遊び半分だったはずが、どんどん悲惨な方向へと進んでいく。

登場人物

山中十四子

トシコ高校三年生

両親と3人暮らしで、たまに偽名の「ホリニンナ」を名乗る。

寺内和子

テラウチ

冷静で容量がよく、頭がいい少し陰気な少女。

貝原清美

ユウザン

男っぽい。同性愛者であることをみんなに隠している。

東山キラリ

キラリン

可愛くて陽気ゲイの友だちがいる。

別グループにも入っていて遊びまくっている。

ミミズ

トシコの隣の家の少年

名門校に通っているが、ある日母親を殺害してしまう。

何となくがきっかけ

テラウチは少し別かもしれないけれど、何となくで事が進んでいきます。

トシコは、たまたま母親を殺したミミズに携帯を持っていかれ、連絡を取り合います。

自首を勧めて、そこまではいいですが、警察に通報しません。

この通報しなかったことが何となくに感じます。

そして、友達がみんなミミズに連絡を取りたいと騒ぎだし、その中から何となく選ばれていく。

過去のトラウマからユウザンは、何となくミミズに携帯と自転車を貸して、キラリンは何となくミミズの逃亡に同行してしまう。

これがのちに大変な事になっていくのですが、そんな事予測できるはずもありません。

この何となくが恐ろしいです。

もしかしたら、ミミズも母親の過干渉が原因ではあるのですが、何となく母親を殺してしまったのかもしれない。

ミミズの行動

ミミズはトシコの携帯のアドレスに登録されている友達の番号に電話をしていきます。

これは自分は人を殺したすごい人間なんだと誇示したいのか、怖いから誰かと話していたいのかどっちなんでしょうか。

落ちこぼれとはいえ名門校に通っていたという事は頭はバカではないです。

ずっと逃亡なんて出来ない、いずれ捕まるという事は予測していたはず。

次は父親を殺害すると言ってますが、これも本心なんだろうか。

テラウチから少しバカにされてしまうミミズは、少し自信を喪失します。

多分、テラウチみたいな自分を見透かしてくるタイプは苦手なようです。

ミミズの内面は書かれていないので、どう思っているのかは分からない。

ただ、ミミズと最後まで同行したキラリンの気持ちで

なんだかんだ言って、あたしがまだ帰ろうとしないのは、ミミズの凋落ぶりが面白いせいかもしれない

『リアルワールド』より

こんな事思われていたのに、マウント取ろうとしていたミミズはかなり憐れに感じました。

本当のリアル

テラウチは死がリアルだと言った。

ミミズには償うか反省するかは知らないけれど、罪を背負って生きるリアル。

一番リアルに掛かっているなと思ったのがトシコかな。

自分を守るために「ホリニンナ」という偽名を使っていたトシコでしたが、事件後はこの偽名を捨てて本名で生きることを決めます。

他の誰も知る事のない小さな決断ですが、これが一番リアルな気がしました。

それぞれの少女が友達に隠し事をしていますが、それも筒抜け状態でバレているのもリアルといえばリアルかな。

若いころの隠し事なんて大体バレてるもんですよね。

それをさも、すごい秘密のように思えるのは可愛いと言えば可愛い。

「リアルワールド」を読んだ感想

読み終わった後のやりきれない感じがすごいです。

こんな女子高生は小説の中だけにして欲しい!みたいなキャッチフレーズがついていたと思いますがまさにそれ!

トシコはまだ唯一まともな方かな。

それでも登場人物全員好きじゃない小説は久しぶりかもしれない。

友だちは友だちなんだけど、これを親友と言っていいのかどうか。

ただみんなに秘密にしていることを、みんなが知っているというのは面白かったかも。

ミミズの妄想も結構面白い。

この手の本は一度読んだらしばらくはこの系統は読みたくないと思うんですが、一定期間置くとまた読んでみたくなるんですよね。

次に読むなら10代が主人公じゃない方がいいな。

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