それぞれがそれぞれの「N」を思うことで、殺人事件は起こった。
あれから十年、事件の真相を明らかにしよう──。
「Nのために」概要
著者:湊かなえ
高級マンションの一室で住人の夫婦が殺害されている。
現場にいたのは同じアパートに住む男女たちと、その中の一人とかつて同級生だった料理人の4人。
それぞれが証言をしていくのだが、そこには真実が隠されていて・・・。
夫婦を殺したのは誰なのか、そしてNとは誰のことなのか?
切なくなること間違いなしのミステリー小説。
登場人物
| 杉下希美 愛媛出身 将棋好きの大学生で、清掃会社でアルバイトしている。 |
| 成瀬慎二 愛媛出身の大学生 希美とは同じ高校の同級生。フレンチレストランでアルバイトしている。 |
| 西崎真人 希美のアパートの隣人 法学部の学生で自称作家。 |
| 安藤望 商社勤務、野口貴弘の部下。 希美と同じアパートの住人。 |
| 野口貴弘 大手総合商社勤務 高級マンション「スカイローズガーデン」に住んでいる資産家の息子。 |
| 野口奈央子 貴弘の妻、専業主婦 元は商社で受付をやっていた。 |
殺害されたのが野口夫婦で現場にいたのが杉下、成瀬、西崎、安藤になります。
それぞれの関係と証言
物語は夫婦の遺体が発見され、4人の証言から始まります。
4人それぞれの野口夫婦との関係と証言は以下のようになっています。
杉下希美の証言
スキューバーダイビングで野口夫婦と知り合いになる。
事件時は、野口家の書斎で将棋の考察をしていた。
成瀬慎二の証言
バイト先のフレンチレストランから出張サービスに来ていた。
事件時はマンションの受付にいた。
西崎真人の証言
奈央子と不倫関係。
夫からを受DVけている奈央子を逃がすため、花屋を装い侵入する。
夫の野口が奈央子を刺し、それを見て燭台で夫を殴って殺害したと自供。
安藤望の証言
野口の部下。
事件時は野口と仕事の話があり、上の階のラウンジで野口を待っていた。
4人の証言が本当だとすると、不倫関係にあった西崎が奈央子と逃亡するためにやってきた。
それを見つけた夫が奈央子を刺し、西崎が夫を殺害となります。
しかし物語が進むにつれて、徐々に真相が明らかになっていきます。
最初の衝撃
4人の証言が終わった後に、懲役10年の判決の主文が二行書かれています。
そこから10年が経ちます。
希美の独白のような形で、余命が半年な事が告げられます。
まずはここで「えっ!」てなりました。
事件当時の希美は22歳で、10年後だと32歳です。
病気なわけですが、読み進めるうちに希美が短命な事もストーリーとしっかりとリンクされていて、この辺りが切なくなってしまいました。
なぜ、こうなるんだ!って怒りがこみ上げてきます。
そこで第1章が終わり、成瀬と希美との関係から始まる第2章につながっていきます。
NのためにのNとは
Nとは一人ではありません。
それぞれにいくつものNがあります。
そして事の発端は「野ばら荘」というオンボロアパートの存続のために、住人である希美、西崎、安藤が動きます。
「野ばら荘」もNです。
過去に戻ると希美が成瀬の為に嘘の証言をします。
成瀬の家は経営不振の料亭でした。
しかしその家が不審火で燃えてしまいます。
放火した犯人は小説内では明かされていません。
ただ成瀬にはこれと言ってアリバイはありませんでした。
個人的には成瀬の父が放火したのかなって思ってます。
希美は非常に複雑な家庭環境で育っていたのですが、この火事により自分が解放されたような感情を抱きます。
そして家事を起こしたのが成瀬だと勘違いして、成瀬の為に嘘の証言をするのでした。
これが一番最初のNのためにです。
作者的には違うかもしれませんが私が感じたそれぞれのNは
- 希美→野ばら荘、安藤、西崎
- 西崎→野ばら荘、奈央子
- 奈央子→野口
- 成瀬→希美
- 安藤→野ばら荘、希美
野口も安藤望の就職を手助けしたという意味ではNのために動いてます。
それぞれのNのためを思っていた
みんな一番大切なひとのことだけを考えた。
『Nのために』より
一番大切な人が一番傷つかない方法を考えた。
自分が守ってあげたことを、相手は知らない。知らせたいとも思わない。
「Nのために」を読んだ感想
ミステリーになりますが、テーマとしては格差もあったと思います。
希美の育った環境はあまりにも悲惨でした。
そして奈央子は何不自由なく育ち、結婚後も何不自由のない暮らしをしています。
わたしは、他人の部屋に無断でドレッサー送りつけてくるような女がこの世で一番きらいなの。
『Nのために』より
それから、野口さんみたいなエゴイストも大嫌い。
あんな夫婦、おかしくなってざまあみろって思ってる。
さすがに言い過ぎだと思いますが、私も奈央子は好きになれません。
希美もあまり好きではないけれど、同情はしました。
一番好きな場面は、高校時代クラスメイトの成瀬と希美は席が前後になります。
希美の前が成瀬の席でした。
希美は「ありがとう」などをシャーペンを押して合図をします。
ある日、4回シャーペンを押した希美。
成瀬はてっきり「だいすき」の4回だと思い込みますが、実は希美は「たすけて」と合図をしていたのでした。
このエピソードが切ないです。
テレビドラマ化
2014年にテレビドラマ化されています。
希美(榮倉奈々)、成瀬(窪田正孝)、西崎(小出恵介)、安藤(賀来賢人)、野口夫婦(徳井義実と小西真奈美)
評判いいみたいで、泣けるドラマとか、おすすめサスペンスなどでは必ず名前が出てくるドラマです。
私もハマってみていました。
久しぶりにもう一度見直してみたいです。