うらやましいほど愉快な共同生活
ここは女たちの地上の楽園!?
「あの家に暮らす四人の女」概要
著者:三浦しをん
織田作之助賞受賞作
古びた洋館で母親を二人で暮らす刺繍作家の佐知。
その洋館に友人の雪乃と、その後輩の多恵美と、4人で暮らす事に・・・
そこに多恵美がストーカーに狙われたり、開かずの間を開けたり、泥棒に入られたり、恋をしたり。
ほのぼのした日常に優しさと切なさとを描いた同居物語。
登場人物
| <牧田佐知> 37歳刺繍作家 ほぼ引きこもり、刺繍の教室を自宅でやっている。 |
| <牧田鶴代> 70歳ちかい佐知の母親 夫の幸夫とは、佐知が産まれてすぐ離婚している。 |
| <谷山雪乃> 37歳佐知の友人で毒舌家 アパートが水浸しになり、佐知の家でお世話になることになる。 |
| <上野多恵美> 27歳雪乃の後輩刺繍教室の生徒 元彼の本条からストーカー行為を受けている。 |
| <山田一郎> 元貿易会社勤め 80歳、寡黙で敷地内に長年住み続ける門番みたいな人。 祖父の代から牧田家に雇われていた。 |
| <梶啓介> 内装業者 佐知の部屋の壁紙を張り替えに来た。 |
結構シビアな要素がいっぱい
ほのぼのしたタッチで描かれてはいますが、よく考えたらシビアな要素がいっぱいです。
佐知に関しては37歳という妙齢で、今から恋愛をして結婚をして、子供を産めるかどうかなどが差し迫っている年齢。
しかも高齢の母親がいるので、近々訪れる老々介護。
刺繍作家という職業柄、退職金もない。
家は古い洋館で補修も必要になってくるでしょう。
雪乃も、どうやら孤独なようで「孤独死」に怯えている。
多恵美はまだ若いと言っても、ダメ男を好きになってしまう体質らしい。
こう取り上げると、割と重いものを抱えている女性たちが登場します。
山田さんの存在
80歳になる山田一郎さんは、離れに住んでいます。
離れと言っても守衛小屋のような感じみたいです。
牧田家の警備員兼世話役みたいな立ち位置なのですが、謎が多い。
山田さんの内面は一切描かれていません。
高倉健が好きで、寡黙で、実際は役には立たないんだけど電球くらいは交換くらいはしてくれる。
女だけの家で、いないよりは山田さんでもいてくれれば心強い。
そんな謎の存在です。
鶴代の若い頃からこの家にいて、てっきり鶴代が好きなのかと思ったのですが、それも謎のままです。
みんな何となく孤独
登場人物全員が孤独を抱えているような設定。
そして全員が(多分)この家で暮らす関係を心地よく感じています。
「淋しみ」を超える唯一の方法は、男でも家族制度でもなく、いつ途切れるかわからぬゆるやかな連帯、なぜ一緒に住んでいるのかすらうまく説明できない、私たちのような暮らしのなかにしかないのかもしれない、と思えてくるのだったそれはそれで刺繍糸よりも細く頼りないつながりであることだ
「あの家に暮らす四人の女」より
山田さんや鶴代がこの家から出ていく事はなさそうですが、いつ亡くなってもおかしくない。
雪乃と多恵美は、他人だからいつ出て行ってもおかしくない。
しかし、この緩やかな連帯に佐知は心地よさを感じています。
なんとなくこの家に暮らす人々が羨ましく感じてしまいました。
ただ、他人同士が同じ屋根の下で暮らすのは大変だろうなとは思いますが。
好きな場面
毒舌家の雪乃が少し弱音を吐きます。
開かずの間を開けたり、勇敢な一面があると思ったら、弱い一面もあり、そこが雪乃の魅力です。
『孤独死』という言葉はチラつくし、私の人生、ほんとにこのままでいいの!?働いて、毎晩ヨガして、無駄に体を柔らかくしてるだけで終わるわけ!?」
「あの家に暮らす四人の女」より
このセリフめちゃくちゃ共感しました。
誰もが思うんじゃないでしょうか?
働いて一日終わってご飯食べて、お風呂入って、寝たらまた仕事。
これでいいの・・・?
そしてその後の二人のシーンも大好き。
「佐知年取っても、私ここにいるかも」と雪乃は言った「いくらでもいていよいよ立ちゆかなくなったら、二人で死ねばいいよ」佐知と雪乃は互いの体に腕をまわし、ガッキと抱擁した
「あの家に暮らす四人の女」より
素敵
佐知も雪乃も結婚しても、みんなで一緒に暮らして欲しい。
「あの家に暮らす四人の女」を読んだ感想
どこにでもいそうな感じの女性たちなんだけど、ゆるい感じに個性的なんですよね。
佐知のセリフには共感しまくりです。
特に内装業者の梶さんから奥さん呼ばわりされて、結婚している女性だと見られたと喜んでいるあたり、私も何となく分かります。
そして70歳近くなっても、昔のお嬢様気質が抜けない鶴代のキャラもいいです。
何となく想像つきますよね。
でもやっぱり一番好きなのは断トツで雪乃です。
毒舌家で社会でもバリバリ働いている風なのに、ふと見せる弱気な一面とかにやられました。
登場人物が全員幸せになって欲しいなあ。
ドラマ化「あの家に暮らす四人の女」
2019年にスペシャルドラマとして放送されています。
- 鶴代(宮本信子)
- 佐知(中谷美紀)
- 雪乃(永作博美)
- 多恵美(吉岡里穂)
ほのぼのした見終わった後にほんわかしそうなドラマっぽい。
見てないし何とも言えませんが、4人とも適役のような気がします。
家族のようで、家族でない人々の、っていう説明がピッタリでした。