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小説「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸

2024年8月22日

別れを決めた男女。

最後の夜に次々と過去が明らかになっていく

「木洩れ日に泳ぐ魚」概要

著者:恩田陸

てんこ

恋愛要素を含んだ男女の心理戦ミステリーです

とあるアパートの一室。片付いた部屋で荷物をまとめた男女が最後の一夜を過ごしている。

ぽつりぽつりと語りだす男女。しかし、徐々に二人の記憶に違和感が生じてくる。

一夜明けるまでに真実は明かされるのか。男女の心理戦が繰り広げられる。

二人の関係性がはじめ全く分からず、話が進んでいき徐々に明かされていく。

そして二人の感じた違和感が解き明かされる。

登場人物

高橋千浩

大学のテニスサークルで知り合った藤本千明と同棲している。

小学校の時に母親が離婚。

藤本千明

千浩と同棲している。

団体行動が苦手で、少々内向的な性格。

山のガイド

東京出身の山男

若いころに離婚していて、年の離れた女性と結婚。

最近、子供が生まれた。

川村実沙子

サークルの二つ下の後輩

千明とは正反対のタイプで、素朴で化粧っ気がない。

偶然千浩と再会する。

高城雄二

サークルの先輩

千明と二年近く付き合っていてプロポーズする。

しっかりした好青年でリーダーシップがある。

面白かったポイント

最初二人の情報が全くありません。

別れる前夜の恋人同士の話なのかと思いました。

しかし、読み進めるうちに二人の関係性が判明します。

しかも、二人ともお互いを疑っていて、相手は殺人者かもしれないと腹の探り合いを始めます。

この辺りの心理戦が非常に面白いです。

ラストに近づくにつれ、徐々に真実が判明していくのですが、結局最初に疑っていた部分は解明されないままです。

そして、どんでん返し的なラストを迎えます。

気に入った一文

そのまま引用しただけですが・・・

その曇りのない目が、次第に苦痛になった

引用:木洩れ日に泳ぐ魚

えてして本当の事は人を傷つける。ただのちっぽけな「事実」ですら破壊力はじゅうぶんで、凡人のささやかな人生がふっとんでしまうことだってしばしばだ。

引用:木洩れ日に泳ぐ魚

彼女はそう言いながらも、もうどうでもいいようだった。その声からは、軽蔑すらも消えていた。そこにあるのは、自分とは無関係である、というあきらめのような虚しさだけだった

引用:木洩れ日に泳ぐ魚

上手く言えないけれど・・・みたいな事を文章にするとこうなるんだ!っていうお手本のようです。

小道具のナイフは

イフを埋めるシーンがありますがこれよく分からなかったです。何で埋めたのかな。

部屋を出ていくときに、千浩は動かないと書いてあるので寝たふりをしているのか、本当に寝ているのかどっちだったんでしょう?

一瞬殺害してしまったのかとも思ったけど。

子供の頃の記憶が曖昧なのは仕方ないとしても、千明は山に登った時も記憶が断片的に飛んでいます。

もしかして千浩を殺害してしまった記憶が無くなったとか?

それで朝に隣に千浩がいるのを確認して寝ていると思った千明は、そっと部屋を出ていきます。

しかし潜在意識で殺害したことは残っていて、それでナイフを埋めたのかとも一瞬考えたけど、やっぱりただ寝てただけですね。

結果、女性の千明の方が先に歩き出しました。千浩が少し可哀想に見えますね。

切ないラストでした。

「木洩れ日に泳ぐ魚」を読んだ感想

※ネタバレに触れているので注意※

最初から引き込まれました。とにかく二人の関係が知りたくて。

お互い疑っているという心理戦が繰り返されるのが面白かったです。

千明の記憶が曖昧になったり、二人の雰囲気もぼやけてる部分が多いです。

途中どっちかが、もしかして幽霊なのかと思ったけど全然違いましたね。

結局、ガイドの死因は分からないままで、千明の憶測でしかないので真相は闇の中です。

著者のみ知る真実ですが、千明が!と思わなくもないです。

そして二人とも真実が分かったとたんに相手への興味を急速に失うところが何とも残酷です。

鴻上尚史さんがあとがきを書いてますが、こちらの解説も面白く読めました。

特に障害のある恋愛ほど長くくすぶり続けるというのは妙に納得です。

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